
思想
AIを最後にする理由
AIを導入すること自体は、目的ではない。
日本の製造業が本来の競争力を発揮できる状態をつくることが目的で、AIはそのための最後の手段。
01
日本の製造業は、まだ世界で通用する
海外で仕事をしたことで、日本の製造業が持つ強みに改めて気づいた。技術力、品質へのこだわり、現場力、改善力、責任感、顧客要求に応える力、そして長年蓄積された製造ノウハウ。
一方で、多くの日本の製造業はその強みを十分に発揮できていない。製品や技術が弱いのではない。組織、業務、文化、意思決定の仕組みが、次の時代に追いついていない。
02
ツール導入しても楽にならない
AIを入れる、DXを進める、システムを刷新する。目的として語られるのはたいていこの形をしている。だが現場を見ると、ツールは増えているのに、会議も報告も承認も減っていない。
提案を適切に評価できる人材が社内にいないと、必要以上に高額・高機能なものを選びやすい。入れたあとも使いこなせず、現場の負担だけが増える。導入したこと自体が成果になってしまう。
03
ずれているのは、プロダクトではない
起きているのは、製品が悪いことだけではない。課題の置き方がずれたまま、ツールと提案が入っていくこと。現場が困っていることと、経営が買おうとしているものが、最初から噛み合っていない。
何を残し、何をやめるかを決めていない状態では、要件は定義できない。この手前を飛ばすと、不要な業務までシステム化・AI化することになる。不要な仕事をAI化しても、不要な仕事が速くなるだけ。
業務をやめる判断は、担当者にはできない。「この仕事は要りますか」と聞かれて「要りません」と答えられる人は、ほとんどいない。止めて問題が起きたときに、誰が責任を取るかも決まっていない。だから先に、決められる状態をつくる必要がある。
04
だから、AIは出口になる
改革が進まないとき、原因を「現場の意識が低い」「抵抗勢力がいる」に求めてしまう。ほとんどの場合、それは違う。組織の力関係、過去の経緯、報告の作法、評価のされ方。個人がそう振る舞うことが合理的になるように、構造が組まれている。
組織改革で決められる状態をつくり、業務改革で不要な仕事を止め、判断基準を整理し、標準化する。ここまで来て初めて、人が担う必要のない業務が輪郭を持つ。そこがAIの領域になる。
順番は変えない。順番を守るだけで、開発費も保守費も小さくなる。
05
提案で終わらせない
買う側に必要なのは、新しいツールのカタログではない。自社の業務を把握し、何をやめるかを決め、そのうえで必要なものだけを選ぶ力。外から提案を渡すだけでは、その力は残らない。
だから、課題の定義から実装の手前まで、中に入って一緒にやり切る。IT企業を悪者にはしない。責める対象は「誰か」ではなく、課題設定がずれたまま進んでしまう進め方そのもの。
必要なのは、新しいツールではない。
何を残し、何をやめるかを決められる組織。